2021年4月1日に新設された「ふくしま子どもの心のケアセンター」の所長に就任しました矢部博興です。よろしくお願い申し上げます。
当センターは、東日本大震災から10年目を迎えた2021年4月1日に、COVID-19の世界的な感染の拡がりの中で、福島学院大学駅前キャンパス内に開設されました。現在、福島県は地震・津波による被害からは立ち直りつつあるものの、原子力発電所事故の災禍に未だに苦しめられております。2014年の国際専門家会議の提言書では、チョルノービリ(チェルノブイリ)事故後の経過を踏まえ「今後は放射能被曝そのものよりもメンタルヘルスに問題が集約される」と報告されました。被災後10年間が大事な児童思春期と重なった福島の子どもたちへの影響は計り知れません。また、県内外で長期の避難生活を余儀なくされた親子への影響もあります。また居住制限が、2015年からは楢葉町、川俣町、浪江町、飯舘村、2017年には富岡町と、段階的に解除され、帰還されたご家族への心の支援が強く望まれております。
実は、福島県における子どもの心のケアは、センター開設前の10年間、子ども未来局・児童家庭課のふくしま子どもの支援センター事業、教育庁・義務教育課および高校教育課の事業、県の委託を受けた福島県立医大の県民健康調査(こころの健康度・生活習慣に関する調査)の一部、県の障害福祉課の委託を受けた精神保健福祉協会が運営する心のケアセンター事業の一部などが、それぞれ個別に行われて来ました。各々の成果も素晴らしかったのです、密接な協力関係が構築されてはおりませんでした。教育庁・義務教育課からの要望と子ども未来局・児童家庭課からの委託を精神保健福祉協会が受けて当センターが設立され、同じ傘下の組織の心のケアセンターや、福島県教育委員会等の関係機関と、垣根のない効果的な支援が可能となりました。
現在のセンター事業は、以下の5つです。
- 乳幼児の発達支援として、避難を余儀なくされた浜通りの親子に対して医療支援とコンサルテーションを行います。
- 家族支援として、ビーンズや児童発達支援施設と連携して保護者支援プログラムを実施し、また県内外で子育ての悩みを共有するままカフェなどの交流会を実施します。
- 学校支援として、県教育委員会と連携して、小・中・高校生に対する予防的心理教育プログラムのこころの授業や、児童精神科医と公認心理師による巡回相談、浪江、富岡、双葉などの小・中学校での心の健康相談、被災地の小・中・高校生のアンケート調査を行います。
- 地域支援として、子どもに関わる施設と連携しながら地域巡回相談、要保護児童対策地域協議会への協力、ふくしま心のケアセンターとの連携支援を行います。
- 支援者支援として、多職種連携フォーラムなどを行います。
職員の不断の努力により、センターの活動は着実に実を結んでおります。前述の国際専門家会議において私は、ベラルーシの子ども達の経験から、福島県の心のケア事業は最低30年を要すると主張いたしました。つまり、当センターの事業は今から少なくとも20年は継続すべきです。皆さまのご理解・ご協力を末永くよろしくお願い申し上げます。